2016年7月17日日曜日

わさび

 ケン一からの釣果報告のメールの中にわさびを刺身の上に乗っけて食うように強要してくるようなグルメについて「漁師でお上品に刺身の一切れ一切れにワサビ載せて食うヤツは断言するけど、いない。100%全員がワサビは醤油に溶いて刺身ドバっと漬けて食う。」と激しく非難しているところがあって、「やっぱりそうだよね」と百の援軍を得た気がした。
 漁師って、その日食う分の魚はわざと活き締めとかせずにタンパク質分解早めに調整して、とかやるぐらいに魚の味の分かってる人種である。

 不肖わたくしめも、父方が漁師町の出身で、うまい刺身はしこたま食ってきたという自負があるが、わさびを使うときは、わさびといいつつ実はセイヨウワサビともいわれる「ホースラディッシュ」が主原料として使われている「練りわさび」を醤油に溶いて刺身を食ってきた。

 本物のわさびを、カスザメの皮製の「おろし」ですりおろして刺身のツマにしたものなんてのは、大人になってちょっと良い値段の飲み屋に行ったときに初めて経験したぐらいで、はっきり言って食べつけていない。一応カッコつけて刺身に乗っけて食ったりしていたが「本わさびってこんな味なんだ」と思うぐらいで、それはそれでおいしいとも感じるが、正直物足りない味だと思っちゃったと恥かしながら書いておこう。

 何度も書いてきたが、味覚なんてのは習慣と偏見の産物であって、粉っぽい練りわさびを醤油の色がドロッと変わるまで溶かして刺身を食ってきた男には、そういう味こそが美味であり、刺身のわさびといえばそういうものなのである。
 本わさびなんて食べつけてないものは、たまのごちそうとしてありがたくいただくべきものかもしれないが、うまい刺身があったら、それに練りさびを醤油に溶いて添えてあったなら「どんぶり飯を盛ってこい!」という感じになるのである。

 にもかかわらず、最近スーパーでチューブの練りわさびを買うと「本わさび」とか表示されていて、原材料にホースラディッシュだけでなく、生意気にも「わさび」も使われていて、わりと粗挽きの粒子状になっている。
 このタイプのわさびが、私がもっとも嫌いなタイプであるにも関わらずそんなんしかチューブタイプは売っていない。
 すりたてでも何でもないので、生わさびの風味なんてぜんぜん感じない上に、醤油への溶けが悪い。何であんなモンが主流になってるのか理解に苦しむ。

 昔のホースラディシュの練りわさびがないものかと探すと、SBの缶入り「粉わさび」が売っている。水で練って使うタイプだが醤油に粉のまま溶かして大丈夫。なのだが、量が多すぎて最後まで使いきる前に辛みが飛んでしまう。

 そのほかには、スーパーで刺身を柵で買うと、ちっちゃなパックでついてくる「わさび」がうれしいことに安っぽいぐらいに粉っぽい昔ながらの練りわさびなのである。
 最近はもっぱら、刺身食うときは練りわさび付きのをねらって食っている。

 というぐらいに、我々ぐらいの世代なら、わさびは粉っぽいホースラディシュ原料のを醤油に溶いて使ってきたはずで、それが「お袋の味」的な味覚の記憶の正直なところであるはずだ。
 老い先短くなってきた我が人生、わさびぐらい好きに食ってもええやろと思う。
 今後も己に正直に、わさびは練りわさびを醤油におもいっきり溶いて刺身を食ってやろうと思うのである。

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