2016年8月27日土曜日

台風礼賛

 今年は台風が少ないと思っていたら、ここにきて帳尻をあわせるかのように台風発生しまくっていて、月曜には9号が関東直撃して大雨、10号は西に移動しつつ日本の南で停滞していたと思っていたらUターンして週明け上陸かもという、西から昇ったお日様が東に沈むような「何がしたいんじゃお前!」な訳の分からない動きをしていたりする。

 台風に限らず、低気圧が接近すると頭が重くなったり痛くなったり、膝の古傷が痛んだりと体調が悪くなる気がしていたが、新田次郎の「珊瑚」を読んだときに、全く同じような体質の登場人物がいて、私だけではなくそういう体質の人間がいるのだというのを知った。調べてみると割と普遍的にある症状のようで、「気象病」ともいうようだ。

 「珊瑚」では、荒天を体調で察知するというのが、漁師としての危機回避能力として役立っていたが、今の時代、衛星情報からスパコンのシミュレーションからつかった天気予報が簡単に手に入るので、すでにあまり役に立たない能力であるというか、頭痛いだけで困りものの体質である。

 というわけで、台風が来ると体調不良なのだが、台風自体はそれほど嫌いではない。
 子供っぽい感覚かもしれないけど、台風がやってきて、次第に雨風強くなってくる不穏な感じとか、妙にわくわくするモノがある。

 もちろん被害がでたりするとしゃれにならないけど、台風も来ないと水不足だったりなんだりもあって、災いも幸いも運んでくるというのがやっぱり自然そのものという感じがする。

 釣り師としては、台風直撃で休みの予定がぶっ飛んだり船が出なかったりというのはかんべん願いたいが、低気圧の来る前って一般的に魚の活性は高いし、雨も魚の行動に影響を与えて釣果につながったりするので、恐れつつも期待している心理がある。
 実際には増水濁流で釣りにならない場合も多いのだが、妄想ではいつも爆釣の気がしている相変わらず馬鹿な私であった。

2016年8月20日土曜日

天然素材でも不安です!

 「天然素材で安心です!」というような宣伝文句を聞くたびに、うさんくさく感じるのは杉花粉のアレルギーやらで天然素材にさんざんな目にあわされているからだろうか。

 確かに自然界にないので分解されにくいような人工合成物を人間様は作っちまって、そのために自然環境が汚染されてしまったりなんてのを聞くと、天然の方が安心な気がするのは分かるが、人間が作り出した最強レベルの毒であるダイオキシンでも天然の毒であるボツリヌス毒素なんてのに遠くおよばなかったりするのをみると、天然もおっそろしいなと、ゆめゆめ油断はできぬモノと思うのである。
 天然素材だから安全安心だというのは幻想に過ぎないだろう。

 天然の毒物で過去に私がくらった中で最悪だったのは、チャドクガ幼虫の毒で、高校の時に中庭の椿に毛虫が湧いているのに気づかず、窓から出入りするというお行儀の悪いことをしているときに椿に背中を擦ってしまい、しばらくして猛烈なかゆみに襲われた。
 密集している毛虫たちにシャツごしに接触したようで、背中半分ぐらいの広い範囲が気が狂いそうにかゆく悶絶した。皮膚科に行くと首あたりまで赤くただれていたので「毛虫ですね」と一目で先生分かったようでステロイド軟膏を出してもらった。

 毒生物といえばハチにも何度か刺されて痛かったけど、釣ったアイゴとハオコゼにも刺された経験があり、いずれもハチ以上にズキズキに痛かったのを憶えている。
 魚で毒針というと、他にもゴンズイやミノカサゴ、死亡例もあるアカエイ、オニダルマオコゼなんてのも海に行けばいるのでくわばらくわばらである。

 海に行くと魚以外にもおっそろしい毒生物はいて、身近なところではちょうどお盆ごろに海水浴場でもみられるアンドンクラゲなんてのも、水中で見つけて「あっち行け!」と手で追い払おうとしたら逆に水流で引き寄せてしまい水中でアワ食いつつ刺されたりしてヒリヒリと痛かった記憶がある。近い仲間のクラゲには沖縄のハブクラゲやら豪州のオーストラリアウンバチクラゲ(キロネックス)なんていうヒリヒリ程度で済まない人死が出るクラスのもいてこれまたくわばらくわばらという感じである。

 クラゲではカツオノエボシやアカクラゲといった触手の長いクラゲも、釣りしていて要注意である。ルアーのフックとかに触手だけからんで揚がってくることがあったりするけど、見た目ビニール片のようなので不用意に触ると、ビリビリと痺れるような痛みがくる。カツオノエボシをして電気クラゲとは言い得て妙だなと感心するぐらいのビリビリ具合である。

 毒生物って、恐ろしいのとともに、それ故にとても魅力的でもあるとも感じていて、警戒色の青いリングが特徴的なヒョウモンダコとか、アンボイナやタガヤサンミナシなんかのイモガイ系とかも、美しいのもあってとても惹かれるものがある。海で見たことはまだないが怖いもの見たさでいつかお目にかかりたいモノだ。

2016年8月14日日曜日

蝉の一生

ジュィィィィーーーーーーーーーっという鳴き声がたくさん重なって音の圧力を感じるぐらいにアブラゼミが鳴いている。
 今年は特に多い当たり年ではないだろうか?
 学生時代に大学の構内で異様にアブラゼミがわいた年があったことを憶えているが、そのときはセミが手で取れるぐらいの木の低い位置にもたくさんいた。今年の我が家周辺もそこまで多くはないがそれでもかなり多いような気がしている。今でも低い位置に止まっていると思わず捕まえようとしてしまうのだが、今年はその機会が多い。でも若いときと違ってトロくさくなってしまったのかいつも逃げられている。

 アブラゼミって、異様にたくさん羽化する年とそうでもない年があって、アメリカの有名な素数蝉13年ゼミ、17年ゼミと同じように、7年に1回ぐらい当たり年があって、捕食圧をうまく逃れているのじゃないかと思っていた。7も素数であるし漠然とそう思っていた。

 昭和の時代を少年として過ごした我々世代は、アブラゼミの寿命は7年、卵で1年、地中で育つ幼虫が6年目に羽化すると図鑑とかで習ってきたのだが、どうも最近の説ではアブラゼミの寿命は5~8年ぐらいで多少ずれることもあるような書きぶりである。
 となると当たり年は7年ごとというわけではなくて、環境がよかったとかの要因で沢山羽化した年なのかもしれない。

 ネットで調べてみると、中学生が調べたアブラゼミ3年周期説とか、別の報告者のやっぱり7年周期説とかもみつかって面白いが、これだけ身近にたくさんいるアブラゼミの寿命とかがはっきりわからないとか、なかなかに自然は謎にあふれているなあと思うところである。
 セミの一生ぐらい誰か、百でも千でも飼育試験して明らかにしてくれないものだろうかとも正直思う。

 と、儚い命の代名詞でもあるセミの一生について書いていたら、グリーンランドシャークことニシオンデンザメの寿命が400年ぐらいあるとう調査結果がニュースで駆け巡り大いに驚いた。400百年てどうよ!やっぱり自然は謎にあふれている。ゆっくり泳いで急がずながーく生きて大きくなるようだ。日本の近海深くには近い仲間のオンデンザメが棲んでいる。最大7mともいわれる海の怪物である。いつの日か釣ってみたい!

2016年8月10日水曜日

輝くものすべてが金ではない

 スポーツは最近結果だけネットニュースで見ればいいやと思う日々で、オリンピックもその日のダイジェスト番組程度でいいやと思うのだが、格闘技が好きなので柔道だけは注目選手の出る階級ぐらいは朝早くにやってるのを起きて決勝見ておこうかなと見たり見なかったりしている。
 日本発祥のお家芸のはずだが、なかなかに苦戦していて、朝の放送では準決勝ぐらいから始まるのだが、すでに目当ての選手負けてたりして切なくなったりもする。

 オリンピックが開幕する直前、柔道五輪三連覇の天才野村忠宏がレポーターで、五輪連覇し損なった努力家井上康生現監督に直撃インタビューしている番組を見たが、なかなかに味わい深かった。
 男子全階級で金メダルというのが目標だという井上監督に「ほんとにそれ信じてるの?」とか、ぶっちゃけた冷めたコメントをぶちかます天才野村に井上監督が「選手たちがそれを信じてがんばっているのに監督がまず信じてやらなくてどうしますか!」と返すあたりに、井上監督の優しくも熱血な人柄がみてとれる。
 逆にそれが絵空事だと割り切れる冷徹さが、勝負の世界で前人未踏の世界に足を踏み入れた天才野村の天才たるゆえんだろうか。
 なにしろ現役時代、週に3日だかしか練習しないとか、およそ日本人が大好きな努力と根性の正反対にあるようなお方である。
 井上監督が「野村先輩と違って、私なんかはさんざん練習してこれだけ練習したから負けるはずがないとか思うタイプ」とか言っていたが、普通そんなもんだろう。普通といっても井上監督のようにオリンピックで金とれるのは「普通の天才」というところだろうが、連覇するような異常な天才は我々にはよくわからん世界の住人のようである。
 とはいえ、男子ではロンドンでは金メダル0だったのが、まだ重い階級いくつか残る今日時点で既に大野選手が金メダル、普通の天才井上監督にしてよかったなと思うところである。大天才野村は天才過ぎて普通の天才を指導するのはチョット難しいような気がする。

 番組ではこれまた五輪連覇してる女子柔道の谷亮子元選手と天才野村の取った8個!!のメダルを並べるというシーンがあったけど、正直それまで私は三連覇の野村を差し置いて二連覇の谷に国民栄誉賞が与えられているのは不当だと感じていたが、谷元選手の金2銀2銅1の物量を目のあたりにして、これは日本人なら谷の方に国民栄誉賞を与えるしかなかったんだなとちょっと納得した。4年かける5回の20年にわたって五輪でメダルが取れるレベルにあって、かつ天才野村よりはわかりやすい努力家の彼女は日本国民の好みに合っているのだろう。

 野村、谷の両大天才に現役の柔道家で比ぶべき選手は、「野獣」松本薫選手ぐらいかなと思っていたが、残念ながら今回は銅メダルに終わっている。連覇って本当に偉業だな。
 松本選手前回金メダルを取ったロンドン五輪では、場外に逃れようとする相手選手の足を引っ張って場内に引きずり戻して仕留めようとするというショッキングなシーンが繰り返し流れていてすっかり有名になったが、その他にも「待て」がかかるまでは、うずくまっている相手の襟を絞めようとしているように見受けられたり、なかなかに「野獣」のニックネームに恥じない戦闘狂じみた戦いっぷりが小気味よかった。
 今回も、気迫あふれる試合への入り方とか、ちょっと天然入ったインタビューとか、らしい活躍ぶりだったようには思う。

 オリンピックに出るような選手は、はっきりいって皆程度の差はあれ天才といって良いのだろうが、輝ける才能が金メダルを必ずしも保証するものでもなく、金に値するのは各種目階級ごと4年に1人のみで、それ故に取った人間は手放しの賞賛に値するのだと思う。
 まあ、金じゃなくても、あるいはそもそも参加できなくったって、輝かないってわけでもないようには思うけど、人は金ピカの威光にひれ伏すようにできているということか。
 柔道もJUDOという世界的なスポーツになって久しく、もう日本のお家芸というわけでもなくなっているのかもしれない。金でなくてもがっかりせずに選手の健闘に喝采を送るべきなのかなとチョット反省している。

 あと、メダル授与の後で選手が何か謎の物体を記念品としてもらっているのが、なんなんだろうなあれ?歯ブラシ立てという噂は本当だろうか?とへんなところも気になるリオ五輪なのであった。

2016年8月6日土曜日

夏の読書

 暑が夏い!梅雨も明けて夏本番だが、カラッとくそ暑い。
 週の前半は、大気の状態が不安定でゲリラ豪雨が来たりして蒸し暑かった。先日は未明にものすごい雷を伴う豪雨で目が覚めたりした。最近の雨はよくあんなに降るなと思うぐらいにドシャメシャに降る。

 寝苦しい夜に、扇風機かけながら布団に寝転がって眠気が来るまで本を読むというのはなかなかに乙な楽しみだが、暑くて脳みそがトロけそうなのであんまり難しい内容のものは読みたくない。
 こういうときにはサクサク読める面白エッセイなんてのが良い勝負をしてくれる。眠くなったところで区切りをつけてそのまま寝てしまってもいいけんね。

 私の中で面白エッセイといえばオーケン先生とシーナ先生の両先生が双璧である。
 しかしながらオーケン先生は本業がバンドマンなのでそれほど冊数が多くなくて、すでに飽きるぐらい繰り返し読んでしまっているんだな。
 その点シーナ先生は頼もしいぐらいの多産な作家である。
 何しろ月刊やら書き下ろしやらも書きつつ週刊連載のエッセイを一時期2本抱えていたという生産性の高さを誇る。
 このエッセイが面白くて読みやすい。旅の多いシーナ先生の日常をダラダラと書いているだけのようでいて、なぜか面白くて飽きがこない。これってなにげにすごいコトですな。
 週刊エッセイの片方「新宿赤マント」シリーズが終了して、こちらは全部読んでいたが、もう一方の「ナマコのからえばり」シリーズの方はまだ連載中で途中までしか読んでいなかった。
 ここに来てシーナ先生、著書の電子書籍化が進んでいて、ナマコシリーズもキンドル版がドドンと出ていたのでガシガシと読みあさった。やっぱり面白いんだなあ。

 深く考えさせられるような本や、興奮して夢中になってしまうような本ももちろん良いものだが、あんまり深く考えずにサクサク読んで面白いというのも実にありがたいものなんですねえ。

 シーナ先生、エッセイの中で今まで書いてきた書籍が200冊以上と書いていて、半分ぐらい読んだかなという感じだが、残りまだ100冊ぐらいあるかと思うと頼もしい限りである。エッセイの他にもシーナワールドと呼ばれるSF作品とかも好きだし、もちろん紀行文も大好きなのだ。

 これだけ冊数があると、電子化されたタイトルとか見てもどれが既読だかおぼつかない。まあ、でも2回読んでも悪いわけじゃないので読んだことなさそうなのは片っ端から読んでいこうとキッパリと思ったところなのだ。