2016年8月10日水曜日

輝くものすべてが金ではない

 スポーツは最近結果だけネットニュースで見ればいいやと思う日々で、オリンピックもその日のダイジェスト番組程度でいいやと思うのだが、格闘技が好きなので柔道だけは注目選手の出る階級ぐらいは朝早くにやってるのを起きて決勝見ておこうかなと見たり見なかったりしている。
 日本発祥のお家芸のはずだが、なかなかに苦戦していて、朝の放送では準決勝ぐらいから始まるのだが、すでに目当ての選手負けてたりして切なくなったりもする。

 オリンピックが開幕する直前、柔道五輪三連覇の天才野村忠宏がレポーターで、五輪連覇し損なった努力家井上康生現監督に直撃インタビューしている番組を見たが、なかなかに味わい深かった。
 男子全階級で金メダルというのが目標だという井上監督に「ほんとにそれ信じてるの?」とか、ぶっちゃけた冷めたコメントをぶちかます天才野村に井上監督が「選手たちがそれを信じてがんばっているのに監督がまず信じてやらなくてどうしますか!」と返すあたりに、井上監督の優しくも熱血な人柄がみてとれる。
 逆にそれが絵空事だと割り切れる冷徹さが、勝負の世界で前人未踏の世界に足を踏み入れた天才野村の天才たるゆえんだろうか。
 なにしろ現役時代、週に3日だかしか練習しないとか、およそ日本人が大好きな努力と根性の正反対にあるようなお方である。
 井上監督が「野村先輩と違って、私なんかはさんざん練習してこれだけ練習したから負けるはずがないとか思うタイプ」とか言っていたが、普通そんなもんだろう。普通といっても井上監督のようにオリンピックで金とれるのは「普通の天才」というところだろうが、連覇するような異常な天才は我々にはよくわからん世界の住人のようである。
 とはいえ、男子ではロンドンでは金メダル0だったのが、まだ重い階級いくつか残る今日時点で既に大野選手が金メダル、普通の天才井上監督にしてよかったなと思うところである。大天才野村は天才過ぎて普通の天才を指導するのはチョット難しいような気がする。

 番組ではこれまた五輪連覇してる女子柔道の谷亮子元選手と天才野村の取った8個!!のメダルを並べるというシーンがあったけど、正直それまで私は三連覇の野村を差し置いて二連覇の谷に国民栄誉賞が与えられているのは不当だと感じていたが、谷元選手の金2銀2銅1の物量を目のあたりにして、これは日本人なら谷の方に国民栄誉賞を与えるしかなかったんだなとちょっと納得した。4年かける5回の20年にわたって五輪でメダルが取れるレベルにあって、かつ天才野村よりはわかりやすい努力家の彼女は日本国民の好みに合っているのだろう。

 野村、谷の両大天才に現役の柔道家で比ぶべき選手は、「野獣」松本薫選手ぐらいかなと思っていたが、残念ながら今回は銅メダルに終わっている。連覇って本当に偉業だな。
 松本選手前回金メダルを取ったロンドン五輪では、場外に逃れようとする相手選手の足を引っ張って場内に引きずり戻して仕留めようとするというショッキングなシーンが繰り返し流れていてすっかり有名になったが、その他にも「待て」がかかるまでは、うずくまっている相手の襟を絞めようとしているように見受けられたり、なかなかに「野獣」のニックネームに恥じない戦闘狂じみた戦いっぷりが小気味よかった。
 今回も、気迫あふれる試合への入り方とか、ちょっと天然入ったインタビューとか、らしい活躍ぶりだったようには思う。

 オリンピックに出るような選手は、はっきりいって皆程度の差はあれ天才といって良いのだろうが、輝ける才能が金メダルを必ずしも保証するものでもなく、金に値するのは各種目階級ごと4年に1人のみで、それ故に取った人間は手放しの賞賛に値するのだと思う。
 まあ、金じゃなくても、あるいはそもそも参加できなくったって、輝かないってわけでもないようには思うけど、人は金ピカの威光にひれ伏すようにできているということか。
 柔道もJUDOという世界的なスポーツになって久しく、もう日本のお家芸というわけでもなくなっているのかもしれない。金でなくてもがっかりせずに選手の健闘に喝采を送るべきなのかなとチョット反省している。

 あと、メダル授与の後で選手が何か謎の物体を記念品としてもらっているのが、なんなんだろうなあれ?歯ブラシ立てという噂は本当だろうか?とへんなところも気になるリオ五輪なのであった。

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