2017年1月28日土曜日

サイモチの神-大海原篇-



 前後上下左右青色が延々と続く大海原のど真ん中を行く、そんなサメたちはいったいどんな景色を見てどんな暮らしをしているのだろう。ヒレで波を切り颯爽と大海原を切り裂いて泳いでいるのだろうか?
 孤独や自由といった概念を彼らが持ち得るとは思わないにしても、圧倒的なその孤独とその自由について、なにか感じたりはしているのだろうか?

 「サメは泳ぎを止めると窒息してしまう」というのは良く聞くフレーズだけど、多種多様のサメの中にはふつうに底生性で海の底に張り付いたまま呼吸ができる種もいる。そんな中で大海原に特化したサメは、やっぱり泳ぎを止めると窒息したり、高効率に行動するために体温を高く保つ体の仕組みを持っていたり、ヒレが効率よく泳ぐのに適した形となってたりということで、有り体にいってサメといってイメージするのはこの手の高速遊泳に特化したサメであろう。
 戦闘機のノーズアートなんかにサメの絵が描いてあると、同じ流線型紡錘形で方や海を行く魚、方や空を行く機械で、その魚の「恐怖」「早さ」「格好良さ」にあやかるように戦闘機に絵が描かれていくという、その「気分」をなんとなく理解できるところだ。

 早い魚というと、カジキだマグロだという魚がとりだたされるけど、これらスズキ目魚類の出現は6千年前と比較的新しい。対してサメの仲間は今のスタイルのサメが出てきたのは1億年以上前とずいぶん古い話だが、その頃からスピードに特化して大海原で生き残ってきた現在の大海原を行くタイプのサメたちは、カジキやマグロにも負けない性能を持って生き残っているとみている。
 ということで、今回は大海原を行く「サイモチの神」ナマジ的ベスト3ということでいってみたいと思います。

○3位 クロトガリザメ
 釣り人の中で黒潮の魚といえば、カツオにシイラ、キハダあたりだろうか?是非これにクロトガリザメも加えてやって欲しい。名前も知られずに外道の「サメ」とだけ認識されてぞんざいに扱われているのは可哀想である。
 今回紹介する中で、この種だけ釣ったことがあるのだけど、かけた瞬間から素晴らしいダッシュで、スパーンと体が抜けるジャンプも披露してくれました。実にスピードのある素晴らしい獲物でした。
 メジロザメ目でメジロザメ、ガラパゴスザメ等々似たような種が多く、同定は難問中の難問ですが、東京都水産試験場の調査では小笠原や伊豆諸島周辺とかでカツオやキハダの操業時に混獲されるサメのほとんどがこの種だったということなので、キハダやらと一緒にイワシボール追い回してるのはこのサメであってると思います。ヤワな道具じゃ太刀打ちできないのでキハダタックルで本腰入れる必要のあるアツい獲物でっセ。

○2位 ヨゴレ
 危険なサメ四天王に入れられていることが多いその名もヨゴレ。外洋性で人間との接触の機会は比較的無いのだが、外洋という餌の限られた世界で生きているため、手当たり次第何でも食べるタイプで、船舶が外洋で沈没した場合など、その際の遭難者が被害に遭う。第2次世界大戦でも沈められた船舶の遭難者を数多く襲ったことで知られている。サーファーやダイバーなどが事故に遭う他の危険なサメ四天王(ホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメ)とは一線を画す殺し屋ぶり。
 ヨゴレの名はその先端が丸く広く長い胸ビレ、背ビレの縁が斑に白ちゃけているところから。その大きなヒレを使って、エネルギー効率よく大海をグライダーのように泳いでいっているんだろうと考えられている。
 いろんな写真を見るとブリモドキ(パイロットフィッシュ)を引き連れていることが多いように思う。よるべない大海でブリモドキにとっては頼りになる兄貴分なのだろうか。


○1位 アオザメ
 これぞ進化の神がつくりたもうた「最速の魚」のマグロやカジキ以外の解の一つではないだろうか。
 ネズミザメ目の特徴である、体内の血管と体表側の血管で温度交換を行い体温を高く保つための「奇網」、流線型のボディーに上下が同じ大きさの尾ビレ。そして水の乱流を制御して水流抵抗を軽減する体表の鱗のパターン。
 アオザメはそのスピード、ジャンプ、そして食味から米国の釣り人にはそこそこマニアックに人気がある。youtubeでもイルカのような回転ジャンプを繰り返している映像が確認できる。
 NYの市場を散策したときにも、輪切りにしたマコシャークは売っていて食用としての人気の高さがうかがえた。紀伊半島でも「サメたれ」と呼ばれる干物の原材料の一つとなっており故郷の味として懐かしく思い出される。
 マコシャークの「マコ」はマッカレル(サバ)シャークがなまったものという説と、マオリの言葉で「人食い」を表しているという説があって、後者の方がカッコいいかなと思いつつも、「サバザメ」呼ばわりされているところからも分かるように魚食性が強く、歯も切り裂く三角歯ではなく突き刺す牙状であり、前者がほんとのところかなと思う。歯からみると人を食いそうにはない。


 いずれ劣らぬスピードスターで泳ぐためにそうなったカッコいい形をしています。是非こいつらともお手合わせする機会があればやっつけてみたいモノです。
 クロトガリザメはキハダを追っかけていれば副産物的にいるはずなので、是非マグロ野郎の皆様におかれましてもワイヤーリーダーと餌用意してそのファイトを堪能してもらいたいです。最高のやったり取ったりの楽しみを保証します。

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