2017年2月12日日曜日

暗黒に潜む名状しがたきもの達の婚姻の宴

 玄く冷たい季節が終末を迎え、月の力が満ちてまた衰えるとき、そのもの達は婚姻の予感に打ち震える。

 光の届かない暗黒で、牙とあまたの触手をそよがせて生きてきた体に歓喜がほとばしる。

 汚らわしい太陽が地に落ちる頃、そのもの達は我先にと天上を目指す。

 宴の夜は短い。

 生の限りを尽くしてそのもの達は精を放ち地に溢れんと繁栄を求める。

 宴の夜は恐ろしい。

 多くのものが狩られる恐怖さえ感じるまもなく狩るものの胃の腑に落ちる。

 宴の夜は狂おしい。

 生と死が、静寂と混乱が、始まりと終焉が、あるべきものとなかったものが、得たものと失ったものが、観測されるものと観測するものが、箱の中の猫のように不確実。

 宴の夜は待ち遠しい。

 不確実なものが確かなものとなることが過去においてのみならば、今宵を過去にせんがため、今宵いざゆかん。

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